棗―替茶器 (茶道具の世界)

棗―替茶器 (茶道具の世界)

棗―替茶器 (茶道具の世界)

 茶道具に初めて興味を持った頃、薄茶を飲むためにはまず抹茶の入れ物だと茶器を買おうとしたのだが、お店で探してもしっくり来るものがない。どれもがきれいな蒔絵で飾られていて、侘びたものがないのだ。きっとどこかには男性向けの茶器があるものとそのときは思ったものだった。
 この本を読んでみるに、どうも現代は薄茶が主であり薄茶のための棗がもっぱらであり蒔絵無しで侘びた茶入れはほとんど存在しないようだ。美しくはあるのだけれど、男が飾るには少々気恥ずかしい。力強い形の面白さにあふれた他の茶道具たちとはどうも美的基準がずれている。
 茶の入れ物はもっとも初期に評価されていたジャンルである上に人気を奪われて久しいため、そのままあまり変化せずに来たのかもしれない。
 結局、自分は茶碗の類はそろえてみたものの、いまだに棗は持っていないのだった。