開館20周年記念 戸栗美術館名品展 鍋島−至宝の磁器・創出された美−

 鍋島焼は藩の御用窯で、他藩への贈答用や将軍家への献上品として装飾性の高い皿などを主に製造した。今回の名品展では鍋島焼を時代やテーマに沿って陳列してあり、その特色や変化が分かりやすい。
 売り物ではなかっただけあって、鍋島焼は採算度外視して豪勢に作られたものが多かった。なかでも抽象度の高いデザインの一群は、贈り物であることすら無視して尖ったアートを大胆に追求している。抽象的パターンを繰り返しながら壊しても見せるダイナミズムは、果たして当時に受け入れられたのだろうか。そのままNY現代陶芸アート展といった場所に展示しても不自然さはないだろう。
 こうした作品を担当したデザイナーよりも、これを通した責任者がすごい。なにせ藩御用達の品だけにしくじったときは、ああ売れなかったといったことではすまない。首が飛ぶ。案外、鑑賞者の側も先端的なセンスを持っていたのかもしれないが。なにせ富裕層専用の品だったのだから。
 鑑賞後、西武百貨店に行ったら今の鍋島焼が並んでいた。売り物になった鍋島はこじんまりとおとなしかった。