陶磁大系 志野・黄瀬戸・瀬戸黒

 和製茶陶の元祖である志野・黄瀬戸・瀬戸黒の図版と、発掘調査によって得られた知見に関する本。
 これらが一時廃れてしまった原因として、より高温で焼けるような焼成技術が発展した結果、工業製品としてはより薄く堅牢になって見た目も安定したがために、かえって茶人から疎まれるようになったというのが面白い。その高温焼成によって新たに緑色の釉が可能となり、織部が生まれたのだという。なるほど、工芸とは技術によって表現が生まれ、また廃れていくものなのだ。
 デザイン的な面では、茶陶の源流的な形状や絵付けが見られる。織部や楽焼が突然変異的に生まれたのではなく、これらをルーツとしていることがよく分かった。